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【第6話】右手はそえるだけ

 僕が小学生の高学年になった時でしょうか。僕の習っていた道場に新しくおじさんが入ってきました。そのおじさんの年齢は50歳の前半くらいで、身長は160センチより少し高いぐらいの、白髪とお腹が目立った小太りな方でした。

 子供の頃に剣道をしていたらしく、そのおじさんにとっては久しぶりの剣道でやる気もバッチリでした。今まで剣道ができなかったうっ憤を晴らすかのように、とても一生懸命に剣道をされていました。

 しかし、やる気はあってもやはり50代のおじさん・・。肝腎の身体は剣道の動きを忘れていて、頭で理解していることも身体がついてきていませんでした。やはりどこかぎこちなさがあるんですね。先生が悪いところを指摘しても、それがなかなか直らず、何度も繰り返し注意を受けていました。一生懸命だけが売りの、不器用な方だったんですね。

 これがただ一生懸命だけだったなら良かったのですが、困ったことにこのおじさん、強烈な右手使いだったのです。

 剣道では誰でも右手に力を入れて打てば、打たれる側は痛いんですよね。それに加えてこのおじさんはとても力が強いもんだから、おじさんに打たれるとたとえ防具の上でも半端でなく痛く、稽古の後は痣(あざ)が当然のようにできてました。


 剣道では左手が大事だと言われています。左手がしっかりしなければ良い打ち方もできないんですね。僕がいた道場では、竹刀の握り方については次のように教わりました。


『竹刀の握りは左手で握り、右手はそえるだけ』

中段の構えの竹刀の握り

 これはかなり長い間言われ続けましたね。僕は疲れると右手に力が入り、右腕に頼って打ってしまう癖がありました。その時必ず先生が僕の稽古を止めて、「竹刀の握りは左手で握り、右手はそえるだけだ」と注意を受けたんですよね。


 不器用なおじさんはこの右手だけがどうしても直らなかったのです。右利きの習慣で常に右手でやってきたことが、つい剣道にも出ちゃう。それに加え、このおじさんはとても力が強いもんだから、どうしても右手にぎゅーっと力を入れて打ってくるのです。

 ですので、あまりにも右手の力が凄すぎるもんだから、みんなおじさんのことを恐れていました。特に子供たちは薄情なもので、あからさまにおじさんとの稽古は避けていたんですね。

「うわっ!おじさんと当たりそうや・・。お前が先にいけよ!」
「ええ?!嫌や〜。このおじさん痛いんやもん・・」
と小声でこんなことを話していたんですよね・・。


 多分、おじさんはみんなが避けてたことを知っていたと思うんですよ。おじさんは口数が少ない人で、何も言わなかったけれど気にしていたと思うのです。休憩時間もみんなの輪に入らず何か寂しそうに一人で素振りをする姿が多かったですね・・。


 それでも、おじさんは持ち前の努力と一生懸命さで、黙々と竹刀を振り続け、稽古には積極的に前に出ていました。また、稽古で自分の順番待ちの時は、体育館の隅っこで素振りをしているのです。

 大人たちは仕事で遅くなることが多いのですが、このおじさんだけは毎回早めに来て、そして一人最後まで居残り稽古と頑張っていました。


 そんなある日、おじさんと稽古をすることになったときのことです。僕が小声で「痛いのは嫌だな〜」と漏らすと、それを聞いた友達が「いや、最近痛くなくなってきたぞ。」 と言いました。確かにそれまでの強烈な痛さが無くなっていたのです。
 半年後、1年後と、見ている僕らでもわかるぐらい、おじさんの右手の使い方が見る見るうちに改善されていってるのです。

 それまでは、右手の力だけで剣道をしていたので、ぎこちない動きだったのが、振りかぶりから振り下ろしまでの動作がスムーズに進むようになってました。もう1年ぐらい経てば、たとえおじさんに打たれてもそれほど痛くもなく、右手で強く握った時の余分な力は無くなっていたのです。
 これは年月が経つにつれ見る見るうちに改善されてたので、おじさんは通常の稽古だけでなく、僕達の知らないところでも努力をなさっていたのだと思うんですよね。


 僕たち小学生と混じって稽古するのはどこか抵抗があったと思うのですよ。それに加えて僕たちはおじさんのこと避けてましたから、嫌な思いをしていたんじゃないかな・・。しかし、そんなことはお構いなしと、そのおじさんは先頭に立って常に全力で稽古をしていました。年下である先生にも果敢に向かっていく姿や、居残り稽古も積極的にやっている姿はとても印象的でしたね。


 努力が結果に結びつくことはとても難しいことだと思うのですね。せっかく頑張っても結果が結びつかなければ、誰だってやる気も下がって辞めたくなります。特に剣道ってなかなか上達したのが見えにくい競技だから、今頑張っている人で辛い思いをしている人は多くいるんじゃないでしょうか。

 でも、一生懸命続けることは大事だと思うのですよ。ただここで「努力することが大事で結果は二の次だ!」なんて奇麗事を言おうとは思いません。

 でもね、どっかのスポーツ選手も言っていましたが、努力した分だけは絶対に裏切らないんじゃないかなぁ・・。僕はおじさんの背中からそう教えてもらったような気がするんですよね。

つづく

【第7話】クリーンヒット!!

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